入院料の重要な指標!看護必要度について

病院だより看護必要度, 診療報酬

2022年は2年に一度の診療報酬改定が行われています。私の勤めている病院では担当を決めて、担当者が電子カルテメーカーから送られてくる改定プログラムを適応するか各部署と調整する業務を行っています。診療報酬改定については下記記事で紹介しています。

今回の診療報酬改定でもさまざまな改定事項があるのですが、その中で看護必要度について気になり今回調べてみることにしました。

看護必要度とは

看護必要度は正確には「重症度、医療・看護必要度」と呼ばれ、入院患者さんについて手厚い看護の必要性、つまり「手のかかり具合」を測るための指標となります。入院患者さんの手厚い看護が必要な方の割合を算出して、その割合に応じて算定が決まるので入院料が変わってきます。元々は急性期やICUなどの患者さんについての指標として導入された「重症度、看護必要度」が前身となりますが、現在では一般病棟の診療報酬制度にも導入されています。

手術前後の患者さんなど急性期では看護必要度が高く、リハビリなどをおこなっている回復期の患者さんでは看護必要度が少なくなります。また、入院料は病棟ごとに決定されるので、看護必要度が高かった患者さんの容態がよくなって手厚い看護が必要ではなくなった場合は、病棟全体の看護必要度の割合が低くなってしまうので、別の病棟に転棟したり、別の病院へ転院させることで病棟全体の入院料の低下を防ぐようにしています。

該当患者

看護必要度の算出方法は患者さんごとにスコアリングして合計スコアが一定以上になると看護必要度を満たす患者、つまり該当患者になります。そのスコアの判定基準は病棟によって変わりますが急性期一般病棟では以下のようになります。

  • A項目2点以上 かつ B項目3点以上
  • A項目3点以上
  • C項目1点以上

A~C項目というのが出てきましたが、それぞれの項目でスコアリングするチェック項目が違ってきます。

まずA項目とは「モニタリング及び処置等」という分類で創傷処置や呼吸ケア、輸血や血液製剤の管理など主に看護師さんが行う処置に関しての項目です。2022年度の診療報酬改定で変わった大きな点として、これまであった「心電図モニターの管理」がなくなった点です。病棟に行くとピコンピコンと電子音が聞こえてくるのですが、これが心電図です。心電図モニターの管理が要件から外れたことで、看護師さんは心電図モニターを管理する必要がなくなるので業務負担は軽くなりますが、病院経営としては看護必要度を満たすハードルが難しかったとの声もあります。

次にB項目とは「患者の状況等」では、寝返りや移乗、食事摂取など患者さんが自立できるか介助が必要かをチェックする項目です。一部の項目で自立できない状態が当てはまっていても介助を実施していなければスコアに含めない物もあります。こちらは今回の診療報酬改定では変更がありませんでした。

最後にC項目とは「手術等の医学的状況」の分類で、手術や麻酔、内科的治療や検査などをやっているかがスコアリングの要件となります。何か一つでも当てはまれば該当患者になりますが、手術や治療・検査から決められた日数だけ点数がつきます。こちらも令和4年度の診療報酬改定では変更なしです。

入院料について

該当患者の割合によって入院料が変わると話しましたが、具体的にはどのくらい変わるのでしょうか。200床以上の急性期一般病棟では下記のようになります。

入院料1 入院料2 入院料3 入院料4 入院料5 入院料6
看護職員 7対1以上 10対1以上
該当患者割合の基準
必要度Ⅰ/Ⅱ
31%/28% 27%/24% 24%/21% 20%/17% 17%/14% 測定していること
平均在院日数 18日以内 21日以内
点数 1,650点 1,619点 1,545点 1,440点 1,429点 1,382点

他にも細かい算定要件があるのですが、おおまかにまとめるとこのような感じです。

入院料1から6の点数は268点の開きがあります。これは1日あたりの入院料なので2680円違いが出てきます。 もし入院料1が取れるのに、該当患者の割合が低く入院料6を取ってしまっていた場合、2,680(入院料の差額)*200(病床数)*365(日数)=195,640,000で約2億円の差額が生じる恐れがあります。このように計算してみると莫大なお金になるので病院運営側としては重大な機会損失となります。

必要度Ⅰ, Ⅱについて

先ほどの入院料で必要度Ⅰ/Ⅱという記述がありましたが、看護必要度ⅠとⅡの違いは簡単にいうとコンピュータ(レセプト)での評価方法を多く採用しているかどうかということになります。該当患者の判定基準でA~C項目というのがありましたが、A項目の一部とC項目は治療や薬剤、手術などをおこなった場合電子カルテに登録した時点で対象の内容であれば自動的にスコアリングされますが、A項目の一部とB項目については看護師が評価する必要があります。看護必要度ⅠではA項目の一部を看護師が評価しますが、看護必要度2ではA項目の全てをレセプトで評価します。

これにより看護師さんの入力の手間を削減することができるとともに、看護必要度を満たす患者の割合の基準を満たしやすくなると言われています。しかし、看護必要度2では同じ項目でも評価期間の制限があったりして一概に看護必要度2が良いわけではないそうです。厚生労働省としては負担軽減と測定の適正化を推進するために看護必要度2への移行が望ましいとされています。

院内SEの関わり

普段の業務で院内SEは気にすることは特にないのですが、今回のように診療報酬改定では電子カルテシステムに設定を取り込んで関係部署と調整して反映させていく必要があります。また病棟再編などで病棟が変わる場合も各病棟または病室ごとに設定し直す必要があります。

看護師やレセプトを扱う医事課など複数部署が関わるので、情報連携がきちんとされていれば良いのですが、情報が降りてこない場合は直接該当部署を連絡して調節する役目も担っています。

まとめ

言葉だけは聞いたことがある看護必要度でしたが、入院料に大きく関わる指標なので設定を間違えると大きな損失になる可能性があるものでした。病棟再編などで看護必要度を設定したことはあるのですが、複数部署に関係するもので情報が降りてこない場合もあり私も関係各所と連絡して調整した経験があります。

病院を横断的に情報共有できるツールなどがないか調べて多職種連携がスムーズになるように進めていきたいです。