エビデンスに基づいた最適な医療を!クリニカルパスとは?
病院で働いていると必ず耳にするクリニカルパスというものがあります。IT系や工業系出身の方ならなんとなく聞き覚えがあるかもしれませんが、そちらで使われているのはクリティカルパスというものです。クリティカルパスはプロジェクトの各工程を開始から終了まで依存関係に従って結んでいったもので、必要となる時間が最長となる経路のことです。
医療で使われているクリニカルパスも基本的には同じような考えです。クリニックから名前を取ってクリニカルと分かりやすくクリティカルと分けているようです。
今回はクリニカルパスについてまとめてみようと思います。
クリニカルパスとは
クリニカルパスとは病気やけがの治療で入院される患者さんの入院中のスケジュールを表にまとめたもので、それぞれの病気やケガ毎にクリニカルパスが作られます。(全ての病気やケガに対応しているわけではありません)
なぜクリニカルパスがあるのかというと、医師によって異なる医療の差を出来るだけ少なくするために出来ました。担当医によって入院にかかる費用や、日数が異なると患者さんにとって負担が多くなるのでなるべくベストな方法を共有して効率よく医療を施すという考え方です。 もちろん患者さんの年齢や体力、症状の重症度など条件によって同じ治療を行うということは難しいですが、なるべく過去のエビデンス(証拠、実証)に基づいた診療を行うという目的でクリニカルパスが推奨されています。
アウトカム、バリアンス
クリニカルパスを運用するうえで欠かせないキーワードとしてアウトカムとバリアンスがあります。アウトカム(Outcome)とは達成目標のことでクリニカルパスの中で期間の中で達成すべき指標のことです。バリアンス(Variance)とは直訳すると分散という意味ですが、クリニカルパス用語では設定した目標(アウトカム)が達成されていない状態のことです。 それぞれ具体的な例を見ながら説明していきます。
メリット
ここからは具体的なクリニカルパスを例にしてどのようなメリットがあるのか病院職員用のクリニカルパスと患者さん用のクリニカルパスを見ながら説明します。
患者さんにとって
患者さんに説明するクリニカルパスは以下の図のようになっており、図やイラストを使って分かりやすいものとなっています。
- 今後行われる治療や検査内容を把握しやすい
- 検査や治療内容などをカレンダー形式で明記しているため、いつ、何が行われるか理解しやすく安心して治療に臨んで頂くことが出来ます。
- おおよその期間や費用が分かる
- 事前に検査内容や日数がかかれているため、入院費用や入院日数などある程度把握できるようになり、患者さんの負担軽減につながります。
- 治療に参加しやすくなる
- 症状が改善しない場合でも、どこが上手くいかなかったのか説明しやすくなり、目標とのずれが認識できるようになり、患者さんの治療へのモチベーション維持にも役立てます。
職員側
職員側のクリニカルパスは下記のような簡素なものですが、正確に必要な検査や薬の内容が明記されています。
- 医療を標準化する
- 医師の思い思いの治療を行うのではなく、きちんと定められたクリニカルパスを使うことによって、質の高い医療を施すことが出来ます。
- 情報共有し、チーム医療に役立てる
- 医師や看護師、薬剤師、検査技師、リハビリなど様々な職種で話し合い決められたクリニカルパスなので、各分野からの意見が入った情報でチーム医療の促進につながります。
- 医療安全・質の向上に繋がる
- 複数の職種に触れるクリニカルパスなので、確認漏れが少なく指示漏れやチェック漏れの防止に役立ちます。また、うまくいかなかった事例(バリアンス)を評価することにより、より質の高い医療ケアの実現が出来ます。
SEの役割
クリニカルパスは各職種で話し合い作成されていますが、その中にSEの職員も入っています。直接医療現場に出ないSEですが、システム的に実現可能かどうか、各分野からの意見をシステムでどううまくまとめられるかというのがSEの腕の見せ所だと思います。
クリニカルパスのまとめ
名医と呼ばれる医師も素晴らしいですが、全体的な医療の質をクリニカルパスという仕組みを使ってあげていこうというシステムもまた良い取り組みだと思います。 SEは医療の知識がほとんどないので、このようなシステムを使ってサポートしていけるように取り組んでいます。
私はまだ話し合いの場や作成に携わってはいないのですが、クリニカルパスは医療の質の向上や医療の標準化だけではなく、それに関わる事務作業なども効率化が図れるので、今後様々な病気や治療に役立てるよう関わっていきたいです。
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